経済産業省「電子商取引等に関する準則」を読み解く:(1)インターネットサイト上の情報の利用

2006年02月04日 18:15

先に【経済産業省、「電子商取引等に関する準則」でインターネットオークションの規制強化】で報じた通り、【経済産業省】は2月1日、「電子商取引等に関する準則」の改定版を公開した。その中で、特にインターネットオークションに関する規制強化に改正の重点が置かれていたわけだが、それ以外にも昨今のインターネット上の状況の変化や既存ルールの不備に対応するための新規追加項目が山ほど盛り込まれている。あまり話題にはなっていないが、曲がりなりにも官公庁が発した「法律の準則」であり、公的機関によって定義・明文化された内容であるので、必要事項をまとめるべきであると判断。いくつかの重要項目ごとに、簡単ではあるが概略を示しておきたいと思う。

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なお、以前から繰り返して述べているが当方(不破)は法務畑を歩いてきたものでなければ有資格者でもない。法的根拠はないので、あくまでも最終判断は自己責任で行って欲しい(要は投資と同じ)。

さて「電子商取引等に関する準則」の改定・公表について(PDF)」の中で気になるポイントの1つは「インターネットサイト上の情報の利用」。新聞サイトのタイトルのみを抽出して第三者に提供して利を得ることは許されるのか、検索エンジンは著作物を勝手に編集してそれで利を得ているがこれは良いのか、などインターネット上の情報と権利についての線引きを定義している(そもそもインターネット自身が「悪意の無いという前提の元に、情報の自由公開と自由利用」を元に学術的な論点から生まれたものだから、著作権も何も……という主張もあるのだが)。論点としては「インターネットサイト上の情報をプリントアウトや、メール配信、二次利用等する行為は許されるのか」とある。

準則では例として

1.他者作成の情報をプリントアウトしたり、それを企業内で配布したり、あるいはメール配信するのはOK?
2.掲示板の管理人などが掲示板の書き込みを二次利用するのはOK?


の2点を挙げ、それについてそれぞれ

1.個人利用以外は原則許諾が必要。権利者によって黙認されている場合も多いが使い方次第では注意が必要。
2.該当掲示板に必要事項が明記されそれが容易に書き手に認識できる場合は、原則として二次利用を許諾しているからOKと判断される可能性が高い。


とある。


1.については、まずネット上の情報は著作物であるとした上で、プリントアウトやコピーによるメール配信は複製にあたるから、著作権法上保護されうる。また、ニュース記事については

なお、ニュース記事であっても、事実を伝えるにすぎないごく短いニュースや短信と呼ばれる人事異動、死亡記事など、誰が書いても表現に差が出ず、著作物性が認められない情報(著作権法第10条第2項)や、法令、行政機関などが発する告示、訓令、通達や、裁判所の判決など著作物であっても保護の対象にならない(著作権法第13条)場合は、その情報の利用行為が著作権等を侵害することにはならない。


としており(どこまでが「著作物性が認められるかどうか」という判断が微妙だが)条件付ではあるものの侵害行為には当たらないとしている。

一方、インターネットへの情報公開は「だれでもが無償で自由にアクセスできるサイト上へ情報を掲示した場合には、当該サイトにアクセスする者すべてが自由に閲覧することを許容しているのである」から、特段の意思表示が無い限りは、プリントアウトやコピーのメール配信も黙認していると認められうるとしている。もちろん複製販売や、営業資料として社外に配布したり、有料サイトや会員限定の情報を複製する行為は常識的に禁止されるとしている。

2.について。掲示板への書き込みも著作物性が判断されるとした上で、匿名でも著作物性は否定されないとしている。だから基本的に書き手の許可を得ずして「利用」することは著作権の侵害行為にあたる、としながらも、

だが、インターネット上の掲示板という、公衆がアクセス可能な場所に書き込みを行うことは、その性質上、当該掲示板を通じてその書き込みの公衆送信等する行為について、管理者等に対し黙示の許諾があると考えられる。また上記1.に該当する場合などは黙示の許諾があると考えられる。


とし、「掲示板の管理人等なら掲示板上の書き込みに対し、著作権法上の公衆送信等する行為に対し黙認(黙示の許諾)があると考えられる」としている。ただし、それ以外の利用行為は書き込みだけで黙認・権利放棄とは見なされない、としている(もちろん著作物性が無い場合は権利がないので、利用行為も著作権侵害には当たらない)。

そして、例えば

「本掲示板の管理者等は本掲示板に記載された書き込みを、校正上、必要な修正(投稿者名の表示・非表示を含む)を施した上で、予告なく出版することがあります。本掲示版に記載された書き込みに関する著作権及び著作者人格権に関し、出版に係る利用につき、本掲示版の管理者等に許諾するものとします。」

という利用規程について同意画面が表示され、同意した場合に初めて書き込み画面にたどり着くような確認措置が講じられている場合には、当該利用形態についての合意の成立が認められると考えられる。


と具体例を挙げ、掲示板上での書き込みについて二次利用を行う場合、あらかじめ明記しておくことで許諾が受けられると認識される方法を説明している。

もちろん著作者人格権や民法上の不法行為責任、翻訳権、翻案権など考慮しなければならない点も多いが、インターネット上の情報における二次情報としての取り扱い方と判断、そして掲示板上の情報に関する管理人側の二次利用の問題について、「公的機関によるガイドライン」が示されたことの意義は極めて大きい。

今件は上記準則の168ページ以降に記載されている。心当たりのある人は、是非一度目を通しておくとよいだろう。


■関連記事:
【経済産業省「電子商取引等に関する準則」を読み解く:(2)他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点】

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