消費者保護か悪法か、経済産業省「電気用品安全法」などを改正の検討
2006年01月29日 12:10
【Mainichi INTERACTIVE】によると【経済産業省】は1月14日までに、【松下電器産業(6752)】製造の石油温風器で一酸化炭素中毒事故が相次いだことを受け、家電製品安全性向上のため、電気用品安全法など関連法令を改正する方向で検討に入った。購入から一定期間が経つと製品が作動しなくなる「タイムスタンプ」機能を製品につけ、消費者に定期点検をうながす案などが浮上、早ければ2006年度中の改正を目指す。
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記事によれば「タイムスタンプ」の発想は長年使われている家電製品の安全性をどう確保するかという問いに答えたもの。特定の製品について長期間経つと電流が流れなくなるなど動作不能となり、販売店などで点検してもらわないと継続利用ができない仕組み。
無論この方法では消費者の反発も予想されるので経済産業省では代替案として、製品販売時に購入者の氏名をメーカーの名簿に登録し、一定期間後にはがきなどで点検を呼びかける方法も持ち上がっている。
また同省では安全性検査の仕組みの整備や検査機関が欠陥を見逃した場合の罰則規定の導入など、国、検査機関、メーカーの責任範囲を明確にする予定。
人命にかかわる家電製品について安全性を第一に考慮するという意図は判る。が、「●○■タイマー」に揶揄されるような「使用期限が過ぎた途端に半ば意図的に動作しなくなる」というスイッチを入れるのは、「商品」としての価値をあらかじめ限定していると受け止められかねないし、消費者もそのようにしか受け取らないだろう。
「消費者保護という大義名分を打ち立てておきながら、その実、メーカー側の買換え需要を促進して欲しいという意志に応えた法でしかない」と勘ぐられても仕方が無い。実際、シロモノと呼ばれる各種家電商品は以前と比べるとあまりにも性能がよく耐久性も向上したため、機能面での買換え需要がよほどのことでない限り活性化せず、メーカー側では需要喚起の方法はないかと常に頭を抱えているという話も聞く。
また、そのスイッチが作動した時にメーカーが存続していなかったらどうなるのか、メーカーは残っていても交換部品が無かったらどうするのか(現行でも特定商品の生産が終了したあとの交換部品の保存義務は数年とされているのに)、検査と修理によるコストの問題はどうするのかなど、今回の検討案には「?」マークを投げかけざるを得ない点が多い。さらに、リサイクルや商品を大事に使いこなすという「地球に優しい」行動に真っ向から対抗している内容と解釈される可能性も高い。
電気用品安全法つながりで【中古ゲームハードが今春から店舗で買えなくなる?】でも取り上げたゲーム機のハードに限って想像してみると、例えば「このゲーム機は2年経ったら自動的に動作しなくなります。メーカーに検査修理を依頼してください」などと銘打つことになるのだろうか。購入からではなく製造から2年ということだから、(在庫としておかれた期間も計算に含まれるので)ユーザーとしては少しでも新しいハードを求めることになり、店舗側でも在庫は最小限にとどめたくなる。品切れ状態は増え、あるいはメーカーへの直接オーダーが一番「効率よく使える」(生産直後のハードを手に入れられるから)という思惑から、通販会社すら経由しなくなる可能性もある(通販会社はたいてい、ある程度のオーダーが存在する商品はあらかじめストックを用意しておき、逐次出荷と入荷を行って調整している)。
今件については経済産業省の思うところは悪くはない。ただ、「それをやるとどういうことかおきるのか」ということ、つまりプラス面とマイナス面を十分配慮せずに、「決めたことは自分たちの利害関係や先輩らの考えを否定することがないよう、何があっても遂行する」という、いわば官僚主義的な方法論が先行している香りがしてならない。今後の動向を注意深く見守っていく必要があるだろう。
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