情報伝達のネット社会における速さと影響力の大きさ
2006年01月13日 19:00
昔から株式投資をしている人、あるいは過去のデータを検証している人なら気がついていることかもしれないが、ここ数年の間、これまでの投資における「定石」が通用しない、あるいは逆に「定石」が何倍にも拡大する傾向が幾度と無く見られる。これはインターネット及びネット証券の普及に原因があると思われる。
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通常の口コミや新聞・冊子などの一般媒体を用いた情報伝達では伝承時間に限りがあるし、「伝言ゲーム」と揶揄されるように情報そのものにぶれが生じる。ところが20世紀末から急速に普及したインターネットでは「情報の伝達は爆発的に・距離感を無視してスピーディに行われる」「ハイパーリンクやコピーによって、情報そのものぶれの度合いが少ない」という特徴があり、これまで誰も経験しなかったような「形式による情報の伝達」が行われている。
しかもその情報伝達のハードルは極めて低い。新聞社や印刷会社、同人誌のように紙に印刷することもなく、講演会などで人を集める必要もない。ブログや掲示板、あるいはチャットですら情報は瞬時に不特定多数に広がる。
また、インターネット証券の登場は、株式投資のハードルを極めて低くし、ある一定条件を満たせば誰でもすぐに投資に参加できる。注文も即時に市場に反映される。
この「インターネット時代」における特徴は、「情報の浸透スピードと広がり具合、深み」を爆発的に拡大したことになる。そしてそれは、株式市場の動向にも確実に影響を及ぼしている。特にその傾向が顕著なのが「材料株」といわれる銘柄の動向だ。
詳しく言及するのは諸般の事情から避けるが、インターネット時代に突入した株式市場では、「動機づいてから株価が沸騰し、冷却状態に陥る」までの間隔がかつての常識、つまり「定石」よりもはるかに短くなっている傾向が生じている。しかもその度合いはますます強くなっている。情報は瞬時に多数の人に広まり、あっという間に大勢が注目を集める。そして誰かが引き始めるとその情報もすぐに広まり、一斉に逃げ出そうとする。極度な「熱しやすく醒めやすい」状態といえるだろう。
この傾向は何も「材料株」だけに留まらない。一部の人たちだけが知っていたからこそ「定石」として通用したものが、多数の人が瞬時に情報を得、アクションを起こせるようになった今の時代では通用しないものが増えてきている(株主優待取得のための「両建て」が良い例だ)。
過去も現在も、「人の思惑が関与する」「情報の伝達により人の思惑が左右する」という点に違いは無い。だが過去と比べ現在は「伝達スピードの高速化と広範囲化」「情報内容のぶれの少なさ」という要素が加わるため、動向が極端になる場合が多いといえる。
インターネット時代における株式投資では、これまでの「定石」をどうとらえて活かすかについては、大きく二つの傾向から考慮する必要があるだろう。すなわち「これまでの定石は通用するがより圧縮・加速・拡大する傾向にある(振幅が大きくなる)」「これまでの定石がまったく通用しない場合が多くなる」である。
また、インターネット時代だからこそ新たに導かれた「定石」もいくつか登場している。IPO銘柄の公募への投資や、日経インデックスと連動して売り買いを決める「コバンザメ投資法」と呼ばれるものだ。だが同じくインターネット時代の特徴から、これらの投資法は陳腐化しつつある(前者はデータ的にまだ有効なようだが……)。
もちろんこのような時代においても、普遍的な「定石」は存在する。それぞれの個人投資家が自らのスタンスを決め、そのスタンスに則って投資を行い、それで成功を編み出せば、それこそがその人にとっての「定石」となるのだろう。
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