既存メディアが焦るワケ……テレビCMの限界が見え始めた、らしい
2006年01月17日 12:10
【NIKKEI NeT】に次のようなコラムの連載が始まった。タイトルは「テレビは今、何をすべきか」。第一回目のタイトルは「民放の根幹を揺るがす、ある"深刻な"事態(1)~テレビCMの限界が見え始めた」というもの。タイトルから大体推測がつくとおり、今回はテレビCM絡みで「化けの皮がはがれてきた」というか「時代の流れが見えてきた」という話だ。
スポンサードリンク
民放の経営はコマーシャル枠の販売で成り立っている。CATVのように有料視聴制度を設けているわけではないし、局独自のサイドビジネスなど収益もたかが知れたもの。だからテレビCMが効果がないということになれば、スポンサーはコマーシャル枠を買わない、あるいは買い叩くということになり、民放としては経営の重大な危機に直面することになる。例えるのなら1つ1万円で売っていた防犯装置としてのダミーカメラが「ちっとも役に立たない」と世間一般に知られるようになり、売行きがぱったりと止まってしまったりディスカウントストアで3つ980円で売りに出されるというような事態だ。
記事では筆者が高額商品を買う際はほとんどテレビCMの影響を受けていないことを例に挙げている。そしてテレビCMにそれなりの効果が見られるのは、せいぜい「食」の分野だという。さらに「それは筆者だけの特異な例では」という意見を否定するため、トヨタのアメリカでの事例が挙げられていた。
このトヨタの事例というのは、「トヨタは北米でいちばん売れた車種のテレビCMを一切打たなかったらしい」というもの。もしこれが本当なら、(アメリカでは)車のような高級商品において、テレビCMは効果を持ち得ないということが実証実験の結果(もちろん一例だが)として出てしまったことになる。
もしこのデータを元にトヨタが日本で同じようなこと、つまり「テレビCMはあまり車の売行きに影響を及ぼさないのでは。ならばもっと対テレビCM広告費を下げてもいいだろう」という判断を下したら、そしてトヨタに続いて日産やホンダも追随し始めたら、民放は収入源の大幅削減を覚悟しなければならない、かもしれない。そのような危惧が、今日本の民法関係者の間で語り合われているとのこと。また、それの裏付けとして民放各局の営業収入があまりよくないことを例に挙げる関係者も出始めたという。
テレビCMはITスキルのハードルを必要としない「不特定多数の対象」に幅広く告知するのにはいまだにもって有効な手段に他ならない。ただ、昔の「メディアといえばテレビとラジオ、そして新聞くらい」といった過去と異なり、最近はパソコンやケータイによるインターネットでの情報伝達が極めて盛ん。また、フリーペーパーなどの影響力も見逃せない状況になっている。一言でまとめると、「ネットの普及などでテレビCMがかつて持っていた神通力が失われつつある」というところだ。
ましてや、レコーダーの普及で「テレビCMをカットされる可能性が高まっている」というレポートが出て、それを否定するだけの論理的な対論が出てこない以上、「神通力」の縮小は間違いないところであろう。
インターネット企業が盛んに民放各局にアプローチをかけつつ自分らの得意分野から似たようなことを始めてみたり、一方で民放側は既得権益を頑なに守ろうとする現状は、このような「事実」も浅からぬ理由となっているのだろう。
テレビが閲覧される時間は1台につき最高でも一人あたり1日24時間。昔と比べればテレビがテレビゲームに占領されてしまったり、民放側にしてみればテレビを見て欲しい時間帯に携帯ゲーム機やケータイに夢中になったりと、テレビへの注力時間、そしてテレビCMへの注力時間は確実に減りつつある。情報の入手手段としてのテレビ(CM)も、インターネットやケータイがその座を奪いつつある。恐らくは将来、テレビとラジオの関係となるのであろう(どちらがテレビ、どちらがラジオの立場になるかは不明だが)。
参照記事には身近なデータを多用していることから、リアリティを感じると共に独断の色合いも少なからずある。ともあれ参照記事の次回が楽しみだ。
……少なくとも、業界関係者が焦っていることだけは確かだ。参照記事のコメント欄を見ただけでもそれがうかがえよう(苦笑)。
スポンサードリンク
ツイート