最近のソニーの広報展開はどこか変? 落書きを使ったPSPの広告が不評、物笑いのタネに

2005年12月11日 14:55

アートイメージ【HOT WIRED Japan】によると、ソニーがアメリカの主な都市で実施した、落書きアートによる広告戦略が不評を呼んでいるという。一部マーケターからは賛美される一方、この報にあるようなソニーの広報展開方法を見てみることにする。

スポンサードリンク

記事によればソニーにPSPの宣伝方法は、落書きアート(グラフィティー)のアーティストたちを雇い、PSPを使って遊んでいる子供たちの象徴的な絵を建物の壁に描かせたというもの。もちろんソニー側では違法な落書きとしてではなく、建物の所有者にアートを描かせてもらう権利の代金を支払っている。だから普通のポスターや立て看板と同じ広告であり、単に手段が違うだけというのだろう。

ソニーの広報担当としては、目に付く場所でさりげなく、PSPを使って遊んでいるようすを露出することで刷りこみ効果を狙ったのだろうし、「落書きアートに描写されるくらいPSPは一般的である」と思わせる意図もあったのだろう。あるいは「ねぇねぇあの落書きに描いているゲーム機って何だろ?」と見た人の話題にさせる口コミ効果を狙った向きもある。

ソニー側はこのようなキャンペーンを広告代理店を通じて行ったことは認めているが、広告として使ったストリートアートには「ソニー」や「PSP」の文字はどこにもない。分かる人には分かるし、分からない人には疑問符を頭の中に投げかけ、興味を持たせ、他人に問わせる効果を狙うということなのだろう。

だがこれは記事にもある通り、ストリートアートの評判を金で買うようなものだとして物笑いの種になっている。ソニー側の意図に不支持を表明する人らによって、その「広告」が塗りつぶされたり、逆意になるようなメッセージが追加されている。元よりポスターなどのような広告媒体と違うし明確なPSPの宣伝でもないのだから、ソニー側としてもクレームのつけようがない(建物の持ち主は困るだろうが)。彼らにしてみれば自分らの文化的な聖域たるストリートアートが「マーケティング」という経済的な観念に侵略されたと考えているのだろう。

街中に描かれたアートと抗議を受けた結果
街中に描かれたアートと抗議を受けた結果(【AfterDawn.com】【WoosterCollective】から)

ソニーではこういった非難、批判に対しては

・アートは主観的なものであり、PSPがゲーム、ネットサーフィン、映画鑑賞などを好きなところで楽しめる「場にとらわれない製品」だというソニーの信念に、これらの内容も媒体もぴったり一致している
・PSPは携帯できる製品なので、弊社のターゲットは、われわれが都市のノマド(放浪者)と呼ぶ人々、つねに移動している人々だ


とコメントしているという。また、マーケター(の一部)たちもソニーのやり方を否定せず、こういう手法を使う権利がある、とまで語る者もいる。

とはいえ、ソニーの最近のマーケティングには多少なりとも首を傾げる面もある。最近ソニー関係の音楽CDにスパイウェアコードをこっそりと入れておきユーザーのパソコンを感染させたのは記憶に新しい(【参照記事:同】)し、日本国内に限ってもウォークマンの新商品の宣伝を下手な自作自演※でブログにて行い見事に演出が露呈し「自爆」してしまう(【参照記事:Propeller-head ONLINE】【そのブログ(現在は閉鎖中)】)話もある。

※一部に「本当に単なるモニターの一人ではないのか」という意見もあるが、閉鎖されたブログのURLを良く見れば「分かる」はずだ。

以前【口コミ効果はホンモノ、85%が購買に影響】など記事でも取り上げているが、特にネットワーク時代には口コミ戦略、俗に言うバイラル・マーケティングが有効だと思われる。ソニーによる今回のPSPのアートによる宣伝も、そしてウォークマンの自作自演ブログを使った宣伝も、その手法を用いようとしたものだろう。また、後者は「最近ブログを使って商品や会社そのものを広く知らしめるのが流行りだ」という風潮があるので、それに乗っての話かもしれない。

だがその戦略・手法の取り扱いについて、ソニー自身、あるいはソニーの広告展開を担当する担当者(か代理店の専属班)が多少なりとも勘違いをしている、または手法やリスクや注意点を十分把握せず、不十分な準備と配慮のまま行っている気がしてならない。

バイラル・マーケティング、口コミ戦略は、それが本当の意味での他意の無い口ミニであればこそ初めて爆発的な効果を生み出す。だがそれがクライアントによる意図的なものであるとあからさまに分かってしまうと、中立的な考えをしていた消費者予備軍ですらネガティブな方向へ走らせる可能性が十二分にある。「薦めてるけど、どうせメーカーの指示に従っただけで、本当はとてもオススメできるようなものではないんだろう」と疑われ、かえって逆効果を生み出してしまう。

情報伝達スピードが通常の口コミとは比べ物にならないネット社会では、逆効果の威力も凄まじいものに他ならない。今回のPSPの件も、ネットを通じてあっという間に「種明かし」の情報が伝わり、興ざめした人の多くが反発しているものと思われる。

先に例として取り上げた、ウォークマンの自作自演ブログの検証サイトで確認してみても、どうにも初歩的なミスが多すぎる。単に下請けの代理店あたりが「ブログで初心者風にモニターのふりをして宣伝すればいいだろう、なぁに消費者はすぐに踊ってくれるさ」くらいの軽い気持ちで運営したとしか思えてこない。これではまるで、大根役者が演じている、科白を棒読みでとちりまくりの映画を見ているようなものだ。

宣伝だろうと意図的な情報の流布だろうと、それが本当に良いものであるのなら別にかまわない。なんとなく「ああこれはメーカーサイドの意図が絡んでるな」と多少思わさせてくれても問題はない。だがどうせならもっとうまくだましてほしいものだし、気持ちよくだまされたいものだ。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ