姉歯建築士が名義を貸していた秋葉三喜雄氏、動向判明。実は始めから免許など持っていなかった
2005年12月05日 19:45
【先の記事(耐震性偽装問題で姉歯建築設計事務所が名義貸し、3棟は無資格設計)】において、耐震書類偽装問題で渦中の人の一人である姉歯秀次一級建築士が名義貸しをしていた建築デザイナー「秋葉設計」の代表・秋葉三喜雄氏について、新たな事実の確証が取れた。
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先の記事の最後に
なお「秋葉設計」については各種検索エンジンで代表の名前を調べてみると、キャッシュデータで色々と面白いことが判明している。だが事実確認が取れず現状では推測の域を出ないのでここでは控えることにする。
と記述していたが、今件はこの内容について関係する部面で動きがあり、確証が取れたことにより記事とすることができたものである。
当時秋葉三喜雄氏の名前を検索エンジンで検索すると、【アリス不動産リサーチ有限会社】の紹介ページのキャッシュ(過去データ)において、秋葉三喜雄氏が「新築物件内覧会立会い・建物調査担当」として名を連ね、その紹介文として
・設計関連業務一筋、キャリアは20年あまりになります。経済設計を得意とし、できることとしてはいけないことの両面を熟知しています
・保有資格等 一級建築士
という記載があった(※現在はキャッシュデータそのものも消えている)。上記記事執筆時には「秋葉三喜雄氏は元々一級建築士の資格を取得していたが何らかの事情で資格を失ってしまった。そこで姉歯氏に名義を借りたのではないか。現在のアリス不動産のページから秋葉三喜雄氏のデータが欠けているのは、もしかすると今件の事件とは関係なく、たまたま資格を喪失した時期と重なっただけかもしれない」という、性善説的な思惑があり、記事にはしなかったわけだ(「だが事実確認が取れず現状では推測の域を出ないので」とはこのあたりから来ている)。
ところがアリス不動産は先日今件についてプレスリリースで見解と動向を説明(【発表リリース、PDF】)した。それによると、アリス不動産は秋葉三喜雄氏の一級建築士資格所有について、本人に確認しただけで(免許や第三者、所轄官庁への確認はなさず)信用し、パートナーシップを結んだという。しかし一連の事件発覚後再確認をしたところ、「一級建築士資格を保有するとしていた事実は虚偽であった」との回答を得た。
アリス不動産は、秋葉三喜雄氏が「今後連絡がつかなくなる可能性もある」としたこともあり(雲隠れかよ……)、電話にてパートナーシップの解消を通告、本人も異論なしとのことで了承したという。なお、秋葉三喜雄氏が携わった物件などについては上記リリースに詳細が書かれている。
まさに「資格は持っていたけど何らかの理由で喪失した。でもスキルはあるから姉歯氏から名義を借りて……」というわけではなく、秋葉三喜雄氏は始めから(少なくともアリス不動産とパートナーシップを結ぼうとした時点において)資格など持っていなかった。そして「一級建築士資格持ってるよ♪」という秋葉三喜雄氏の言葉だけでアリス不動産側は信じてしまったという、「想定外のさらに斜め上を行く」事実だったわけだ。
可能性としては秋葉氏がはるか昔に建築士の資格を持っていた可能性もあるが、それならそれで、過去の資格を何らかの形で偽装するなりしてアリス不動産側に提示しているはず。それが無いということはまず「最初から資格など持っていなかった」という結論になる。もちろん、建築デザインが生業であった以上、素人よりは建築関係の知識に長けていたかもしれないが。
秋葉三喜雄氏と姉歯氏の件を見るだけでも、業界全体の馴れ合い、ぬるま湯な状況がうかがいしれる。それなりに弁が立ち、知識があったのかもしれないが、資格事業について秋葉三喜雄氏の「自称」だけで信頼し、免許の提示や公的機関への確認もせずに、お客へサービスを提供する分野でのビジネス的な関係を結ぶとは、常識として正直考えにくいところではある。あるいはこういう話こそが、業界内における「常識」なのかもしれない。
また、よく考え直してみると、姉歯氏は秋葉三喜雄氏を「十年来の付き合い」と説明していた。ということは、姉歯氏は「付き合いという関係はあるかもしれないが、資格上の問題は十分以上にある」ことを認識した上で名義を貸していたことになり、秋葉氏もそれを承知した上で「成りすまし」をしていたことになる。法律の存在意義そのものを問いたくなる気分になる人も少なくあるまい。
今、姉歯建築士らが関わっていない物件でも耐震強度を調査してほしいという依頼が殺到し、公私機関共にてんてこ舞いの状況であるという報もある。「何処を信じたらいいのか分からない。まずは自分の住家が安全なのか再確認したい」という気持ちが沸き起こるのも無理はあるまい。
余談だが上記リリースでも「青天の霹靂(へきれき)」(リリース上の「晴天」は正確には誤字)という言葉が用いられている。ヒューザーの社長もこの言葉を使っていたが、この業界で流行っているのだろうか。
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