郵便局でも販売を始めた投資信託とは?

2005年11月20日 13:57

【先の記事にもある通り(10月3日から郵便局で投資信託の発売開始)】、郵便局(郵政公社)でも投資信託の販売を開始した(発表リリース>)。初月度の販売実績は飛びぬけた額ではなかったようだが(【参照記事:拡大を続ける投資信託、純資産は4年ぶりの高水準に】)元々公的機関で一定の制限はあるものの元本保証の小堅い安全な金融商品しか取り扱っていないイメージの強い郵便局で、元本割れ(要は買った金額以下の価値になること)の可能性がある商品を取り扱うのは劇的な変化に他ならない。

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未だにこれまでの郵便局のイメージが頭の中に残っている人には、「郵便局で売っているんだから安全。普通の貯金※より利子が高いならラッキー」というくらいに考えているはず。しかしそのイメージで考えていると後々痛い目に会うかもしれない。それは歴史が証明している。

※「貯金」……「預金」と混同しやすいが、郵便局などの公的金融機関にお金を預けることを「貯金」といい、銀行など民間の金融機関に預ける場合は「預金」という。

まずは「投資信託」という商品の意味を明確にしておこう。「投資信託」とは言葉通り、「信じて託す」+「投資」という意味。つまり、「信頼できると自分が判断した投資先にお金を託す」というもの。世間一般にいうところの「投資」の場合にはお金を貸し付けたり株式を購入することになるのだが、「投資信託」の場合には託す先が「運用のプロ(ファンドマネージャー)」が運用するファンドということになる。

つまり、普通の「投資」は直接本人が投資対象を決めるのに対し、「投資信託」はお金を預けて「運用して儲けて下さいね」と頼む金融商品というわけだ。株式や債権を自分で選択したり売り買いするのは面倒だし時間も無いし儲ける自信もないという人にはうってつけのもの。

顧客から「投資信託」の販売代金として資金を集めたファンドはそのお金を元に債権や株式、不動産などで運用し利益をあげ、自分たちの取り分や手数料などを差し引いた成果を顧客に分配する。

「お金をあずけて利益を得るのなら預貯金と同じではないか」と思うだろう。確かに「投資先を特定せずにお金をあずけて一任し、運用結果を期待する」という点では同じ。「預貯金」と「投資信託」が違うのは、大きく2点。リスクとリターン

「預貯金」の場合は元本割れをする可能性はゼロに等しい。銀行が破綻したり郵便局が支払いを停止する可能性は、現行の日本ではほぼないと言っていい(ペイオフの問題は除く)。ただし利子率はスズメの涙。100万円を1年預けても、ATMの手数料1回分で吹き飛んでしまうくらい。

一方「投資信託」では多種多様な配分方法があるし保証利益も異なるが、年率数十パーセントという高利回りの商品もある。その分、元本割れするリスクもあり、元本割れしないという保証もない。但し書きを見ると必ず「元本を保証するものではありません」という記載があるはずだ。預金保険制度の対象外であることも留意しておくべき。あくまでも「預貯金よりも高利回りになるでしょう」であり、「高利回りになります」ではない。

預貯金・株式投資・投資信託イメージつまり「預貯金」と「投資信託」の違いは、ざっくばらんに説明すると「リスクを採るかリターンを採るか」の違いでしかない。

「投資信託」の場合には、商品毎にどんな運用をするか、どのような形で分配されるかなど、それぞれの個性に合わせて多種多様に用意されている。日本の成長株中心に投資して運用するもの、インドや中国の銘柄をメインターゲットにするもの、海外の高利回り債権を運用対象にするもの、不動産などの売買を中心にするもの。予想配当額の明示こそあれ、明確なリスク(元本割れや破綻)を数字的に算出できるはずは無く、もちろん表記もされるものではない。それぞれの商品内容と過去の実績を照らし合わせ、自分の頭の中でリスクとリターンの天秤を調整する必要がある。予想はあくまでも予想でしかなく、結論ではない。

また、「投資信託」の場合、「預貯金」と違い、利益が発生していなくても運用・信託手数料として毎年何%かが「総資産」(利益からではない)から差し引かれる。「預貯金」の場合は放っておいても(スズメの涙であるものの)増加していくが、「投資信託」の場合運用実績がゼロでも手数料が引かれるので、信託手数料分だけ顧客側が損をする羽目になる。

つまり非常に乱暴な列挙をすると、「預貯金」「投資信託」「株式投資」の順にハイリスク・ハイリターンとなると考えれば良い。「投資信託」は「株式投資」よりリスクは低いがリターンも少ないということ(※もちろん本人のスキルややり方次第では「株式投資」は「預貯金」や「投資信託」よりローリスク・ハイリターンとなることも充分にあるうる。要は自由度が高く、本人の責任ですべてが決まる)。

さて、郵便局で販売している「投資信託」だが、【郵政公社の説明ページ】によれば、現在3社の投資信託を取り扱っている。それぞれファンドの投資対象や制限、リスクなどが事細かに説明されている。もちろん実際購入を検討するための資料には、さらに詳細な説明が記載されている。自分の少なからぬ資産を第三者に任せて運用を依頼するのだから、後になって「読んでいませんでした、知りませんでした。だからお金返して」では済まされない。「投資信託」の購入を検討するのなら、対象となるものをじっくりと調べつくそう。

ファンドが好成績をあげるかどうかは経済情勢も大きく影響を与えるが、それ以上にそのファンドの個性(投資対象先の傾向や資金を運用するファンドマネージャーの個性)に寄るところが大きい。過去の実績や傾向を見ておかないと痛い目にあう。

先に「それは歴史が証明している」と表記したのは実例があるからだ。元本割れした「投資信託」など数え上げればきりがないが、多所で例にあげられるのが【ノムラ日本株戦略ファンド】。天下の野村證券がテレビをはじめとした各種媒体で大々的に基準価格1万円で売り出したものの、一時期は4,000円を割り込むありさま。今でこそ株価上昇の恩恵を受けて8,000円台足らずにまで回復しているが、それでも2割の元本割れ。元本保証でない金融商品の怖さを表す一例といえよう。

とはいえ、ローリスク(あるいはゼロリスク)ハイリターンな金融商品など何処にもありはしない。リスクをある程度考慮しなければそれなりのリターンは得られない。ただ、どれくらいのリスクを許容できるのかは、しっかりと調べた上で判断するべき問題。郵便局での販売により手短になった「投資信託」だが、じっくりと下調べをした上で判断をしなければならないことには変わりは無い。場所こそ違えど、普通の証券会社などで販売している普通の「投資信託」と何ら変わりはないのだ。

こんな時に役立つのが「危険(リスク)分散」「卵とザル(器)のたとえ話」の考え方なのだが、それはまた時期を改めて。

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